大学物理 力学-剛体の運動- 直感的に
大学での物理学は、まず力学から始まります。
力学の序盤は、高校物理(質点の力学)を微積分で記述する方式を学び、そのあとに剛体の運動を学びます。
物理と微積分の記事は以前のものがあります。
剛体の運動は、質点にはなかった"回転"が関わってきます。
回転が加わることにより、質点に比べて複雑な運動が実現されることになるのです。
今回の記事では、剛体の運動を直感的な見方と、少し数学を含んだ見方から説明します。
剛体の定義
Google先生に聞く
まず、剛体の定義を行います。
堅い話の前に、google先生に聞いてみましょう。
ごうたい【剛体】どんなに力を加えても形が変わらない物体。
-google検索より
こんな物体あるわけねーだろ
「実在しないなら考える必要もない」と思うのが当然ですので、
google先生の定義を少し補足していきます。
机≠剛体?
身近な物体を思い浮かべてみましょう。
机や椅子は、人間が乗った程度では形を変えませんね。
では、(唐突ですが)机の上にトラックを置いてみましょう。
机はどうなるでしょうか?
壊れ(形を変え)ますよね
よって、google先生に言わせれば机は剛体ではありません。
机≈剛体
ところで、人間が優しく取り扱う範囲*1では、机は形を変えませんね。
医薬品は「使用上の注意」をよく読んで正しくお使い下さい
医薬品と同じく、机も"使用上の注意"を守れば剛体とみなせるのです。
Googleの文章では、
かかる力がどこまでも大きくなり得る
ために剛体は実在しない概念となっていました。
しかしながら、机の例のように考える事象を限定すれば、
物体を剛体とみなせるようになるのです。
こうして、剛体=壊れない物体であること、身近な物体も剛体とみなせることがわかりましたね。
大学の力学では、このような剛体の運動を扱っていきます。
数学的な見方から
はじめに述べたように、大学物理の力学という科目では、最後に剛体を取り扱います。
Googleの定義は直感的には十分な説明に思われます。
しかし、この定義では数字を扱ううえで不十分です。
特に、"形が変わらない"というのは数学的な表現ではありません。
まずは現実と数学のギャップを埋めましょう。
剛体=質点の集まり
高校物理で扱った対象は、大きさのない質点でした。
一方で、身近な物体には大きさや形がありますね。
そこで、大きさのない質点が密集してできているのが剛体だと考えます。
剛体は質点の集合である。
このように考えることで、大きさを持つ物体の力学を、大きさのない質点の力学で記述できます。
剛体の形
物体の形というのは、異なる2点間の距離によって決まります。
剛体の場合、形が変わらないというのは、点の間の距離が事象の間に変わらないことを意味しています。
剛体において、異なる2点間の距離は変わらない
つまり、剛体中の任意の2点A,Bの距離|A-B|は事象のあいだ常に一定
以上のことを踏まえると、剛体は次のように言えます。
剛体は大きさのない質点から構成され、その質点間の距離は常に一定である。
剛体の運動
剛体の運動は、質点間の距離を一定に保つように実現されます。
このような、異なる2点間の距離を一定に保つ変換は2種類しかないことが知られています。*2
- 2点の平行移動
- 共通の中心を持つ回転
それぞれが実現する剛体の運動を見ていきましょう。
2点の平行移動
例えば、2つの質点,をだけ平行移動したとき、距離|-|は変わりませんね。
剛体の運動でいえば、大きさを持つ物体が並進していることに対応します。
共通の中心を持つ回転
当たり前ですが、2人がどんなに円周をグルグル回っても、中心が同じならば直径が最短距離です。
剛体の運動としては、これまで質点に無かった回転運動が実現されることになります。
このような運動を、質点の力学から構成していくのが剛体の力学です。
もちろん、大学で扱う物理ですから、バリバリ数学的にやることになりますが…
まとめ
- 剛体とは、壊れない物体の名称である
- 身近な物体も、状況を限定すれば剛体とみなせる
- 剛体の条件である、質点間の距離が一定を満たす運動は、平行移動と回転である
以上がまとめになります。
ざっくりとした記事になりましたが、おおまかな流れはこのようになっています。
剛体運動は計算することが多いですが、その応用範囲は広いですから、学習する価値は十分あると思っています。