せつなのブログ

理系大学生のブログ ゲームとか学問の話をしていけたらなーと思っています

大学物理 力学-剛体の運動- 直感的に

大学での物理学は、まず力学から始まります。

力学の序盤は、高校物理(質点の力学)を微積分で記述する方式を学び、そのあとに剛体の運動を学びます。

 

物理と微積分の記事は以前のものがあります。

 

www.y-setsuna.com

 

剛体の運動は、質点にはなかった"回転"が関わってきます。 

回転が加わることにより、質点に比べて複雑な運動が実現されることになるのです。

 

今回の記事では、剛体の運動を直感的な見方と、少し数学を含んだ見方から説明します。

 

 

 

剛体の定義

 

Google先生に聞く

 

まず、剛体の定義を行います。

 

堅い話の前に、google先生に聞いてみましょう。

 

ごうたい
剛体
 

どんなに力を加えても形が変わらない物体。

              -google検索より

 

こんな物体あるわけねーだろ 

 

「実在しないなら考える必要もない」と思うのが当然ですので、

                                                      google先生の定義を少し補足していきます。

 

 

 机≠剛体?

身近な物体を思い浮かべてみましょう。

 

 机や椅子は、人間が乗った程度では形を変えませんね。

 

 

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 では、(唐突ですが)机の上にトラックを置いてみましょう。

 

        f:id:ysetsuna:20200312180542j:plain

 

机はどうなるでしょうか?

 

壊れ(形を変え)ますよね

 

 よって、google先生に言わせれば机は剛体ではありません

 

机≈剛体

ところで、人間が優しく取り扱う範囲*1では、机は形を変えませんね。

 

医薬品は「使用上の注意」をよく読んで正しくお使い下さい

 

医薬品と同じく、机も"使用上の注意"を守れば剛体とみなせるのです。 

 

Googleの文章では、

  かかる力がどこまでも大きくなり得る

                 ために剛体は実在しない概念となっていました

 

しかしながら、机の例のように考える事象を限定すれば、

                  物体を剛体とみなせるようになるのです。

 

 

 

 

 

こうして、剛体=壊れない物体であること、身近な物体も剛体とみなせることがわかりましたね。

 

大学の力学では、このような剛体の運動を扱っていきます。 

 

 

 

数学的な見方から

はじめに述べたように、大学物理の力学という科目では、最後に剛体を取り扱います。

 

Googleの定義は直感的には十分な説明に思われます。

 

しかし、この定義では数字を扱ううえで不十分です。

 

特に、"形が変わらない"というのは数学的な表現ではありません。

 

まずは現実と数学のギャップを埋めましょう。

 

剛体=質点の集まり

高校物理で扱った対象は、大きさのない質点でした。

 

一方で、身近な物体には大きさや形がありますね。

 

そこで、大きさのない質点が密集してできているのが剛体だと考えます。

 

剛体は質点の集合である。 

 

このように考えることで、大きさを持つ物体の力学を、大きさのない質点の力学で記述できます。

 

剛体の形

 物体の形というのは、異なる2点間の距離によって決まります。

 

 剛体の場合、形が変わらないというのは、点の間の距離が事象の間に変わらないことを意味しています。

 

剛体において、異なる2点間の距離は変わらない

つまり、剛体中の任意の2点A,Bの距離|A-B|は事象のあいだ常に一定 

 

以上のことを踏まえると、剛体は次のように言えます。

 

剛体は大きさのない質点から構成され、その質点間の距離は常に一定である。

 

剛体の運動

剛体の運動は、質点間の距離を一定に保つように実現されます。

 

このような、異なる2点間の距離を一定に保つ変換は2種類しかないことが知られています。*2

  1. 2点の平行移動
  2. 共通の中心を持つ回転

 

それぞれが実現する剛体の運動を見ていきましょう。

2点の平行移動

例えば、2つの質点\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\boldsymbol{a}だけ平行移動したとき、距離|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{y}|は変わりませんね。

 

剛体の運動でいえば、大きさを持つ物体が並進していることに対応します。

 

共通の中心を持つ回転

当たり前ですが、2人がどんなに円周をグルグル回っても、中心が同じならば直径が最短距離です。

 

剛体の運動としては、これまで質点に無かった回転運動が実現されることになります。

 

このような運動を、質点の力学から構成していくのが剛体の力学です。

もちろん、大学で扱う物理ですから、バリバリ数学的にやることになりますが…

 

まとめ

  • 剛体とは、壊れない物体の名称である
  • 身近な物体も、状況を限定すれば剛体とみなせる
  • 剛体の条件である、質点間の距離が一定を満たす運動は、平行移動と回転である

 

以上がまとめになります。

ざっくりとした記事になりましたが、おおまかな流れはこのようになっています。

 

剛体運動は計算することが多いですが、その応用範囲は広いですから、学習する価値は十分あると思っています。

 

 

 

*1:振り回さないでください、高いところから落とさないでください、バリケードに使わないでください etc…

*2:数学的にはユークリッド群と呼ばれます